変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで、痛みや機能障害を引き起こす病気です。初期には立ち上がりや歩き始めにだけ痛みを感じることが多いですが、進行すると安静時にも痛みが現れ、日常生活に支障をきたします。

変形性膝関節症はどんなもの?

変形性膝関節症は、関節を覆う軟骨が老化や肥満、怪我などが原因で徐々にすり減り、関節が変形していく病気です。軟骨にはクッションの役割があり、この軟骨がすり減ることで骨同士が直接ぶつかり、炎症や痛みが起こります。

50歳以上の女性に多く見られる傾向があり、階段の昇り降りで痛みが出るようになります。
症状が進行するとO脚(内反膝)が進行することもあります。

痛みの特徴と主な症状

変形性膝関節症の主な症状は、以下のような膝の痛みです。

  • 動作時の痛み: 立ち上がる、歩き始める、階段を上り下りする際に、膝に違和感や痛みを感じる。
  • 安静時や夜間の痛み: 病気が進行すると、動いていない時や夜寝ている時にもズキズキとした痛みを感じる。
  • 膝の腫れや熱感: 関節内の炎症が強くなると、膝が腫れたり、触ると熱を持っているように感じたりする。
  • 膝の曲げ伸ばしが困難: 膝が完全に伸びなかったり、曲がらなくなったりするなど、可動域が狭くなる。

主な治療方法

変形性膝関節症の治療は、一人ひとりの症状や進行度に合わせて、最適なプランを立てることが重要です。当院では、患者さまの生活の質(QOL)向上を目指し、痛みの治療変形の進行を抑える治療を組み合わせて行います。

保存療法

運動療法、インソール(足底板)、ヒアルロン酸注射、消炎鎮痛薬を組み合わせて行います
関節に痛みがあると、力を入れると痛いので歩かなくなり、筋力が低下し、膝関節が不安定になり、軟骨がすり減り、さらに変形が進んで痛みが悪化するという悪循環になります。
そのため、膝関節に重力を掛けずに、痛みが出ない方法で、筋力を強化する運動療法が有用です。特に、初期や中期の変形性膝関節症において、運動療法をしっかり行うことで、5年~10年痛みが出ない状態にすることが可能です。

運動療法

専門の理学療法士が、どのような運動がご自身の症状に合っているか確認した上で指導を行います。
膝周辺の筋力をつけたり、正しい歩き方の指導を受けることで、膝への負担を軽減し、痛みを和らげます。

一度にたくさん行うのではなく、毎日少しずつ継続することが大切です。また、痛みがあるときは無理をしないようにしましょう。

インソール(足底板)

インソール(足底板)は、靴の中に入れておくことで、膝関節にかかる負荷を分散し、痛みを和らげ、変形の進行を抑えます。足底の型を取り、ひとりひとりの足の形に合わせて作成する、治療装具です。
使い始めの2週間くらいは、いつも使わないふくらはぎの筋肉を使うので、筋肉痛になることもありますが、3週間程度使っていると慣れてきます。

ヒアルロン酸注射

膝関節の中の軟骨がすり減った状態だと、膝関節の衝撃吸収力が低下し、関節の滑りが悪くなります。ヒアルロン酸は弾力がある液体で、関節内に注入することで、衝撃の吸収力と関節の動きを滑らかにすることができます。

手術治療

保存治療で充分に効果が得られない場合や、変形が進行した中期・末期の変形性膝関節症に対して手術治療を検討します。関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術があります。
人工膝関節置換術は、関節軟骨と骨を削って金属とプラスチックで置換する手術です。1週間ほどで歩行器を用いた歩行訓練が開始され、3週間前後で退院します。術後30日ほどで旅行に出かけられるようになる方もいます。

手術治療を希望される方は近隣の医療機関で、経験豊富で安心して任せられる医療機関をご紹介しています。

予防と痛みの軽減のためにご自宅でできること

日頃からセルフケアを行うことで、痛みの予防や軽減につながります。

  • 適度な運動: 膝に負担をかけすぎない水泳や水中ウォーキング、サイクリングなどがおすすめです。
  • 体重管理: 体重が1kg増えるごとに、膝には歩行時に体重の約3倍の負担がかかると言われています。適正体重を保つことが大切です。
  • 膝周りの筋力アップ: 太ももの前側(大腿四頭筋)や裏側(ハムストリングス)の筋肉を鍛えることで、膝関節の安定性を高められます。

つらい膝の痛み、もう諦めないでください

当院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、丁寧な問診と検査を行い、最適な治療プランをご提案します。膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

「もう年だから仕方ない」「我慢するしかない」と、膝の痛みを諦めていませんか? しかし、痛みは我慢するものではなく、治療することで改善できる可能性があります。

| リハビリテーション科へもどる |