
肩が痛くなると、「四十肩?それとも五十肩でしょうか?」と患者さんはおっしゃいます。
それくらい知名度が高く、悩んでいる方も多い病気です。 しかし、肩が痛いからといって全てが肩関節周囲炎というわけではありません。
板断裂や変形性肩関節症、上腕二頭筋長頭腱炎など、他の疾患である可能性もあります。
四十肩、もしくは五十肩だろうと放っておかず、まずは医療機関を受診し、診断を受けるようにしましょう。
肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)とは?
肩関節周囲炎とは、肩関節の周辺組織に炎症が起こることで痛みや関節の動きが悪くなる病気です。半年程度で治る場合もあれば、痛みが残る人もいます。
どのような過程をたどるにせよ、大切なのは、炎症期を過ぎたらリハビリをしっかり行うことです。痛みが強い炎症期には安静が効果的ですが、痛みが和らいだ後の拘縮期には、安静にしているだけでは治りません。この時期には、固まってしまった肩を動かすためのリハビリが必要になります。

主な症状
肩関節周囲炎の主な症状は、以下のような肩の痛みです。
- 肩の痛み:特に夜間痛
- 肩の動きの制限:腕が上がらない、後ろに回せないなど
肩関節周囲炎の診断・検査
まずは問診にて痛みの部位、肩の動きの制限がどのくらいなのかを確認します。
問診後、腱板断裂などの他の疾患がないかどうかを明らかにするためにレントゲン検査(単純X線検査)を行います。
場合によっては、MRI検査を行います。
レントゲン検査
肩関節周囲炎はレントゲン写真では異常がないことが特で、これにより他の疾患でないことを診断できます。(除外診断)
主な治療方法
薬物療法
- 痛み止めの飲み薬や、塗り薬、貼り薬などの外用薬を処方します。
一般的に、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が使用されます。
注射
- 関節内注射: 肩関節内にヒアルロン酸を注射し、関節の動きをスムーズにすることで痛みの軽減が期待されます。
- ステロイド注射: 日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みで、発症から6週間以内の急性期の場合に効果的です。
炎症を抑える効果がありますが、副作用もあるため医師とよく相談の上、検討します。 - ハイドロリリース注射(筋膜リリース): 生理食塩水と局所麻酔などを用い、癒着した組織を剥がす治療法です。
超音波(エコー)で確認しながら行い、鎮痛効果に加え、可動域の改善に効果があります。

理学療法
- 症状の発症時期に応じて、肩関節の周りの筋肉や腱の癒着を取り除く運動量療法が必要です。炎症期を過ぎたら、安静にしているだけでなく、リハビリをしっかり行うことが大切です。
当院では、ブロック注射(肩甲上神経ブロック、肩峰下滑液包ヒアルロン酸注入、肩甲上腕関節ヒアルロン酸注入、筋膜リリース)で痛みを軽減させながら、リハビリを行っていただきます。ブロック注射によって痛みが減るため、リハビリの際にも有利に働きます。
また、硬くなってしまった肩(凍結肩、frozen shoulder)に対しては、麻酔(腕神経叢ブロック)を施した上での徒手的な関節受動術も行っています。
予防のためにできること
日頃から意識することで、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の予防や軽減につながります。
- 正しい姿勢を心がける: 猫背や巻き肩は肩関節に負担をかけるため、普段から正しい姿勢を意識しましょう。
- 肩周りのストレッチ: デスクワークや家事などで長時間同じ姿勢が続く場合は、定期的に肩周りの筋肉をほぐすストレッチを取り入れることが有効です。
- 体を冷やさない: 体が冷えると血行が悪くなり、痛みが出やすくなります。入浴や適度な運動で体を温め、血行を促進しましょう。
- 生活習慣病の治療: 糖尿病などの生活習慣病は、四十肩・五十肩のリスクを高める可能性があるため、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、持病の治療に努めましょう。
つらい肩の痛み、改善しませんか?

当院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、丁寧な問診と検査を行い、最適な治療プランをご提案します。四十肩・五十肩でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
「もう年だから仕方ない」「我慢するしかない」と、肩の痛みを諦めていませんか? しかし、痛みは我慢するものではなく、治療することで改善できる可能性があります。
