「帯状疱疹ワクチン」と聞くと、帯状疱疹やその後のつらい痛みを予防するためのワクチン、というイメージがあると思います。
ところが近年、帯状疱疹ワクチンを接種した人では、将来の認知症の発症が少ない可能性があるという研究結果が報告され、注目されています。
今回は、帯状疱疹と認知症の関係、そして帯状疱疹ワクチンに期待されている新たな可能性についてわかりやすく解説します。

帯状疱疹は「水ぼうそうのウィルス」が原因
帯状疱疹の原因となるのは「水痘ウィルス」です。
子どもの頃に水ぼうそうにかかると、症状が治ったあともウイルスが完全に体から消えるわけではありません。神経の根元にある「神経節」に潜伏し、その後も長期間体内に残ります。
加齢や疲労などによって免疫機能が低下すると、潜伏していたウイルスが再び活動することがあります。これが「帯状疱疹」です。
帯状疱疹では皮膚の発疹や痛みが現れ、皮膚症状が治ったあとも「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる痛みが長期間残る場合があります。
なぜ帯状疱疹と認知症が関係するの?
近年注目されているのが、ウイルスの再活性化と脳への影響です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、明らかな帯状疱疹を発症していなくても再活性化する可能性があります。
こうしたウイルスの活動が繰り返されることで炎症が生じたり、脳の血管に影響を与えたりする可能性が研究されています。
また、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が、体内に潜伏している「単純ヘルペスウイルス」の活動にも影響し、神経系の炎症につながるのではないかという仮説もあります。
そのため、帯状疱疹ワクチンによってウイルスの再活性化を抑えることが、結果として脳を守ることにつながるのではないかと考えられているのです。

ワクチン接種で認知症が約20%少なかったという研究も
研究では、帯状疱疹ワクチンを接種できる年齢基準を利用して接種者と非接種者を比較しました。
その結果、ワクチン接種によって、その後7年間に新たに認知症と診断される確率が相対的に約20%低下したことが報告されています。
シングリックスにも認知症リスク低下の報告
現在、帯状疱疹予防に使用されているワクチンの一つが「シングリックス」です。
シングリックスは通常2回接種する組換えワクチンで、帯状疱疹に対して高い予防効果が報告されています。
さらに近年では、シングリックスを接種した人でも認知症の診断リスクが低かったという大規模研究が複数報告されています。
当院ではシングリックスを22,000円(税込)で受けることができます。
生ワクチン
弱毒化した生きたウイルスを使用したワクチンです。1回接種で済みます。
- 接種回数:1回
- 予防効果:約50-60%
- 効果持続:約5年
料金:6,600円(税込)
不活化ワクチン(シングリックス)
ウイルスの成分を使用したワクチンです。より高い予防効果が期待できます。
- 接種回数:2回(2ヶ月間隔)
- 予防効果:約90%以上
- 効果持続:約10年
料金:22,000円(税込)
「認知症予防ワクチン」と考えるのはまだ早い
ここが最も大切なポイントです。
帯状疱疹ワクチンを接種した人で認知症が少ないという研究結果はありますが、認知症予防効果が確立されたわけではありません。
今後、認知症予防を目的とした大規模な研究による検証が必要です。
一方で、帯状疱疹そのものや帯状疱疹後神経痛を予防するというワクチン本来のメリットがあります。
「帯状疱疹や痛みを防ぐために受けたワクチンが、将来の脳の健康にもプラスになるかもしれない」
そんな新しい可能性が、現在世界中で研究されています。
50歳以上の方や帯状疱疹が心配な方は、帯状疱疹ワクチンについて医師に相談してみてはいかがでしょうか。
なお、このウェールズの研究で使用されたのは現在広く使用されているシングリックスではなく、従来の弱毒生帯状疱疹ワクチンです。一方、シングリックスについても、認知症リスク低下との関連を示す別の大規模研究が報告されています。
「痛みを防ぐために受けたワクチンが、将来の記憶も守ってくれるかもしれない」
そんな可能性が、今、研究されています。
50代以上の方は、帯状疱疹ワクチンについて一度検討してみてはいかがでしょうか?
★大切なポイント★ ワクチン✖️認知症
【7年間の認知症発症が約2割少なかった】
「帯状疱疹ワクチンを打てば認知症を防げる」と、まだ確定したわけではありません。
認知症予防を目的とした大規模な比較試験が必要で、それでも、帯状疱疹そのものを防ぐ効果は期待できます。
